琺夜の軍制


 まだまだ未完成ながら、たまに聞かれる琺夜軍についてちょろっと語りたいと思います。
 ちなみにこの国の軍隊は、基本陸軍です。琺夜の所持する海軍は、併合した元シノア王国軍のみ。そして空軍とは、翼馬騎兵団のことです。


Tome T. 軍人の育成

↑徴兵制
 まず、基本的な所から。
 琺夜は王国なので、軍の所有者は国王です。
 男女を問わず全国民に兵役の義務があります。良心的兵役拒否は認められていますが、この権利を行使するのは主に外国からの移住者であり、生まれた時から軍事国家琺夜に居住する民には、そもそも「良心が咎めるので(あるいは信教によって禁じられているので)殺人なんかできません!」という概念がありません。
 国家に対して軍事産業以外の分野で貢献が認められた場合、兵役が免除されることもあります。また、学士院、大学等の学生は、一概に就学中、軍事訓練を免除されます。
 兵役に就くことが困難な心身の障害を抱えている場合も免除されますが、この場合、病院か書記学校か王立技術兵学校に入る必要があります。
 琺夜では、何らかの形で国家に奉仕しない者は国民として認められません。良心的兵役拒否をした者は、余分の税金を納めるか、定められた期間奉仕活動を行う義務があります。それも拒否する場合、あらゆる公的機関や施設の利用を制限されるばかりか、参政権も認められません。最悪の場合国籍剥奪も有り得ます。簡単に言えば、「戦わざる者食うべからず」。それが琺夜です。

 

↑学制
 琺夜の国民は、満3歳になると半強制的に全寮制の幼等学校(École maternelle エコル・マテルネル)に入学します。訓練期間は3年です。学費は無料。

 幼等学校卒業後、通常6歳で初等軍事学校(École élémentaire de guerre エコル・エレマンテール・ドゥ・ゲール)(学費無料)か、王立技術兵学校(École royale du génie エコル・ロワイヤル・デュ・ジェニ)(後述)に入ります。初等軍事学校での訓練は、通常最低5年。取得単位が基準を満たせなければ進学できないので、同級生は必ずしも同年齢ではありません。落第は珍しいことではありません。あまりいませんが、成績優秀者は飛び級も可能です。
 また、初等軍事学校は幼等学校に隣接しており、幼等学校の優等生は6歳未満でも初等軍事学校の生徒に混じって学ぶことが許されています。理論上、幼等学校卒業前に初等軍事学校の卒業単位取得も可能ということです。これをやり遂げた人が、琺夜の歴史上、二人だけ存在します。余談ですが、スノゥリィ王家はきょうだい全員が8歳未満で初等軍事学校を卒業したエリート一家です。

 落第も飛び級もせずに初等学校を卒業すると、11歳です。第一次兵役はここまで。個人により期間が異なるものの、普通は8年以上。
 ここからの進路は、
→歩兵隊・工兵隊・衛生隊・楽隊のいずれかに入隊
  いきなり入隊。最初は新兵として3〜5人程度の班に配属され、めちゃくちゃに扱かれますが、活躍如何によっては班長→分隊長→小隊長と徐々に階級を上げていくことができます。給料低額。
→王立技術兵学校(École royale du génie エコル・ロワイヤル・デュ・ジェニ)に入学
  通常2年間。学費はお手頃価格。初等学校を卒業していなくても入学可能。入学は簡単ですが、卒業は困難。卒業後は普通、工兵隊に配属されます。また、医学部(Faculte de médecin ファキュルテ・ドゥ・メドサン)もあり、そちらを専攻した場合はそのまま看護師になるか、衛生兵になるか、大学で更に医療技術を学び、医師免許、獣医師免許を取得することもできます。
→士官学校(École militaire エコル・ミリテール)に入学
  通常3年間。飛び級、落第あり。学費高額。卒業後は簡単な研修の後、いきなり中隊長になることができます。バカロレア(Baccalauréat)を取得できるので、大学進学も可能。
→王立学士院(Institut royal アンスティチュ・ロワイヤル)に入学
  通常7年間。学費超高額。最初の4年で、バカロレアと学士号(Licence リサンス)を取得できます。その後、文学アカデミー、碑文アカデミー、科学アカデミー、芸術アカデミー、政治学アカデミーのいずれかに属する教授の下で学ぶことができます。4年で卒業することもできますが、ほとんどの学生は、その後博士号(Doctorat ドクトラ)取得を目指します。

 などの道があります。
※バカロレア―― 現代のバカロレアと同じく、中等教育終了免状であり、大学入学を許可する国家免状ですが、微妙に違います。どのように違うかはまずフランスの学校制度から説明するのが面倒臭いので省きます。ごめんなさい。

 どの進路を選ぼうと、初等軍事学校卒業後、8年間は第二次兵役に就く義務があります。ただし、一家の長男であり、親が死亡して家を継がなければならないとか、扶養すべき家族がいるが誰も世話をする者がいないとか特別な事情があれば、短縮、延期も可能。士官学校及び王立技術兵学校に進学した場合、その就学期間も兵役履行期間としてカウントされます。なお、軍属の事務職員、通訳士等になり、8年以上国家の為に勤めた場合も、兵役満了となります。

 琺夜の兵役は、第一次、第二次、合わせて通常16年です。国民全員が軍人と言っても過言ではありません。貴族のお屋敷勤めのメイドさんであろうとも、有事の際には戦力になるのです。


Tome2.(その2)に続く